ペンタゴン・ペーパーズ


こっちはアメリカの話。序盤のベトナム戦争シーンってこの前「地獄の黙示録」でも見たのと同じ感じだわ。殺戮のためにこれだけの人が動かされるのって、もう時代遅れになったと思いたいところだけど、シリアとかでは今でもまさになんだよね。

ワシントンポストの社主である主人公の女の人が、株式公開とか特ダネのスクープ合戦とかを経ながら重大な決断を下していく話。ワシントンポストといえば有名な大新聞というイメージだけど、これはそうなる前の時代の話みたい。ベトナム戦争が終わっていない頃なので、1960年代ぐらいかな。

私も規模は全然小さいけど、状況はヤバいけど表向きはうまくいっているテイでやらなくてはならない、でも実態を調査するとやっぱりうまくいっていない、ごく一部に向けては正直な相談をしながら綱渡りする、みたいなことを経験してきているから、泥沼のベトナム戦争の状況を把握しながら公開しないということ、それをジャーナリストに暴露されるということ、でも民衆は知る権利を持つ必要があるということ、法的手段に出られた場合に会社がとても厄介なことになること、自分の仕事の立ち位置からは危険な手は進められないこと、いろいろな人のそれぞれの立場が身につまされて、わかるー、って感じになった。そんな中での職務に対しての重大な決断を下す主人公がとても良かった。

あとこの主人公が、男社会の中で一人で対等にやっていこうとする女の人あるあるが詰まっていて、それも身につまされる。資料を事前に読み込んでいて、自分が誰よりも詳しく話せる、という状況でもいまいち話を聞いてもらえず、横からざっと資料を見た男に代弁されるのあるある。扉の外に女性が集まっていて、扉が開くと中は男ばかりの景色もとてもよく見る。このアウェイ感。でも立場としては責任者だから自分の決断次第で何もかも変わってしまう状況に置かれたときの緊張感とか、視線の向き方一つ一つにそれまで積み重なってきた人生が表れてきている感じ。メリル・ストリープってすごい。面白かった。