キャバレー

例によって「午前十時の映画祭」で見てきたよ。もう50年も前の映画...。

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オールザットジャズ」「シカゴ」と見てきて、ボブ・フォッシーという人が、こういう、女の人をオーナメント的に使ってセクシーな演出をすることでアメリカのショービジネスを盛り上げてきた人なんだ、ということがわかってきた。本作も安定のセクシー山盛り。舞台はナチスが広まり始めた時代のドイツみたいで、私はドイツ語も英語も聞いていて区別がつかないんだけど、イギリスから来て英語を教える仕事をしている人とか、長年ドイツに住んでいるけど元はアメリカ人とか、英語を教わりに来たドイツ人とか、言語の綾に関しての小ネタが多く入っていたみたい。字幕ががんばっていた。

主人公役のライザ・ミネリという役者さんはジュディガーランドの娘なんだって。ジュディガーランドって少女のイメージがあったけど、そんな昔の人だったんだ...。

キャバレーで働く退廃的で華やかな人たちの合間合間にファシズムが生活を暗くしていく様子が挟まれてる。今の日本もファシズム一直線な感じだから、この先もっとひどくなるんじゃという気がして不安になってくるね。ユダヤ人の女性が飼っている犬が殺される辺り、日本でもたびたび起きているヘイトによる襲撃事件を思い出さずにはいられない。そういえばアフリカには行ったのか行っていないのかよくわからなかった。行ったにしてはカジュアルすぎる気がして。車で行ける範囲のような感じだったので、アフリカじゃないのかなとか思った。合唱で愛国心を盛り上げるくだりも、ショービジネスの演出家は音楽パワーをよく知っているって感じするね。

本作はキャバレーの司会の存在感がすごくて。こういうのが文化の頂点でもなんでもなくて数多ある庶民的なお店の一つという位置づけの辺りがむしろ歴史と広がりを感じる。エンタメで成り上がるのってほんと大変なのねと思う。「シカゴ」も本作も、成功を夢見る若手女優みたいな人が主人公だけど、こっちのは店の中では既にトップみたいな立ち位置のせいか、成功を夢見る若手女優の歌を歌う大物女優、みたいに見える。

ボブ・フォッシーが関連すると安定して面白いのはわかったけど、この価値観だとなんか性加害とかすぐ隣り合わせのようにも思える。問題ないやつなのかな。日本の映画での性加害の告発とかを読んで、関係した監督(園子温とか)の作品をボイコットしたりはするけど、たいがいは元々合わなそうなやつで見たことがないというのが多くて、こうしてすごい面白いと思ってしまっている作品がダメだったりした場合に、被害者側に立つことって出来るかなーとかも思った。問題ないならそれが一番いいけど。