グリース

これも「午前十時の映画祭」で。

中学生ぐらいの頃に洋楽MTVを見ていて、映画のサウンドトラックスペシャル回というのが時々あって、そこでこのPVを見かけてからずっと気になっていたんだ。30年後ぐらいになって初めて見る。作品自体は40年前の(1978年)。

PVで見る限り、オリビア・ニュートン・ジョンの美スタイルすごい、ジョン・トラボルタは若干キモい、というイメージだったけど、映画ではオリビアが演じるサンディは9割方は上品系お嬢様スタイルで出ていて、トラボルタが演じるズーコの方がセクシーを振りまいている感じだった。トラボルタかっこいいわー。

スポーツが出来るとか頭がいいとかそういうオプション一切なしで、セクシーにパラメータを全振りしたようなタイプって、男性キャラクターでは珍しいなって思った。振り切れていてとても良いわ。サタデーナイトフィーバーも見たくなった。

あとDrスランプの空豆タロウとか、よく漫画で見かけていた、リーゼントの髪にビシっとクシを入れてキメてみせる描写とか、こういうアメリカ青春映画での見せ方が元ネタなのかなって思った。

昔の映画だからか、男子高校生文化、女子高校生文化がくっきり分かれていることになっていて、所謂スクールカーストも明確に描かれていて、こういうのもアメリカが元なんだ、って思った。登場する彼らは上位側なのでノビノビやってるように見えるけど、地位を維持するための力学(所謂マウンティング)に余念のない感じもして、野蛮な時代という風にも見える。カースト下位っぽい少年がいちいち小突かれているような描写が入っていてイヤな感じある。

でも以前もスパイダーマン見たときにも思ったけど、アメリカの高校生のパーティって日本とは比べ物にならないぐらいにお金かかっていて自由で、こういう空気で育った高校生と、下着の色まで校則で決められたり、女の子はモノ扱いしていい/されるもの という認識に取り巻かれているような日本の高校生が、世界の土俵で勝負しなくてはならないって、どれだけハンデがあるのかと思うわ。やっぱり早いところ人権意識を向上させて自由を理解できるようにならないといけない。

PVで見ていた時は主役2人しか目に入っていなかったけど、サンディの友達の、美容師を目指して挫折する女の子(フレンチー)が結構良かった。女子グループの中で独自の人生を模索している感じもよかったし、最後の、イメチェンコーデを手伝って、って辺りに、ピンク髪が活きるミラクルニキっぽさを感じ取って個人的に良さがあった。

このシーンって面白いけど、何故こんな派手に歌われることになるの?という脈絡のなさがすごい。当時の文脈では何かわかるものなのかしら。

妊娠したかも、ってなる女の子も、強く生きることを歌っていて良かった。こういうの見ると、学生で妊娠したかも、という焦りは日本にも輸入されてきているのに、強く生きる方は削ぎ落とされてしまって女学生だけを攻撃するような空気を蔓延させる日本の風土ってヤバいなって改めて思う。関係を持つ前に避妊具を男女双方で確認する意識の高さも良かった。アメリカは40年前に既にこうなのに、日本の遅れっぷりときたら...。

女の子の数を競うような不良男子高校生たちも、女の子に身の回りのお世話させようという方向のキモさは持っていなくて、そこも40年前のアメリカの方が進んでいる。日本って、もともと男女ともに権利意識の低い風土であったところに、こういう男性的かっこよさ、女性的華やかさみたいな文化概念が輸入されてきて、相対的に力が強い男性に都合がいいようにいろいろ解釈が加わって作り替えられてメディアに乗ってきて今の惨状があるのではないか、というように思えてくる。早く遅れを取り戻したいわ。私が生きてるうちにどこまで変わるのかな。