主戦場

「主戦場」見てきた。日本韓国アメリカにまたがって取材されているので、韓国の人が話す時は英語の字幕の横の日本語字幕を見て、日本語を話す人の話は耳で聞いて、英語の時はまた日本語字幕を見てで忙しい。

shusenjo.jp

「テキサス親父」ってどんな人か初めてわかったわ。YouTubeはほとんど見ないし、Twitterでの私のTLには「テキサスおっ母さん」って方のツイートしか流れて来ないから…。

杉田水脈さんも、慰安婦問題について語るところをインタビュー映像では初めて見た。わりとまろやかな口調で、こういう不正義があって、それを許せないと思っているんです、とか言われると、そうなのかな、なんて思ってしまうね。話の裏を取ると、言ってる「不正義」が事実関係として正しくないのでただの中傷だったみたいな感じでいつものイメージ通りなんだけど、その場では丸めこまれてしまう感じが追体験出来る。

話を追う中で色々な人が何度も出てくるけど、毎回名前がちゃんと出るので把握しやすい。チラシに出ているたくさんの人たちが、映画を見終わると見分けられるようになる。日本にも外国にも、いろんな立場の人がいるのがわかるね。日本の登場人物は全員が歴史修正側みたいなことでなくてよかった。韓国の中で、性奴隷についての本を書いたって人と慰安婦団体の代表?みたいな人の主張の対立点だけはよくわからなかった。対立しているのではない?どっちも家父長制マインドによる女性支配を許すまじ、って言ってるように思ったけど。

日本が国として性奴隷の制度なんか作るはずないじゃないですか、っていうのが否定側の主張だけど、まあ今だって女性の生活を家に縛り付けて男の世話させようって発想で設計されてる制度がたくさんあるのと、女と見れば性のはけ口扱いの表現が国内に大量に溢れているんだから、戦時中に性処理させよう位のことはやってたんだろうねって、資料をあたるまでもなく、国内で暮らしてきた体感でもわかるわ。資料は資料であるようだし。否定したいならそれらの背景を無くした上でないと説得力なさ過ぎる。でも否定側は、女を下に置いてあれこれ世話させたい側だからどうしても矛盾するよね。知ってた。逆に何で否定したいんだろうね。表には出せないと自覚している願望なら国際的な場で勝てるはずないんだから諦めればいいのに。

この映画を安倍首相時代に見ていたら、こんなにも多くの人を長い時間悲しませた上に歴史修正なんかに邁進しようとする愚かなリーダーをいつまで持つことになるんだろって絶望感が募る内容だったと思うけど、結局は改憲出来ずに辞めることになったし、歴史教科書も、つくる会のがあまり採択されなくなったってニュースも見たしで、やっぱり事実の方が妄想よりも強いんじゃないかって思えて心強いとこもある。

靖国神社の世界観とかには私も若い頃にははまっていたので、人は色々なタイミングで考えを変えることがあるのも知ってる。映画に出ていた、元は歴史修正側で活動していて考えを変えて活動をやめた(?)人の話が面白かった。この人が資金提供したジャーナリストという人については名前が出なかったけど誰だったのかな。

数年前にあった日韓での「最終的かつ不可逆な合意」って、慰安婦被害者の人は納得していないって話を見たことがあったけど、実際の韓国での映像を見たら、ものすごい怒りがあった。納得していないどころではなかった。「何で私たちに一言の相談もなく合意なんて出来るんですか!」って韓国の国の人がすごく怒られていた。そういう感じだったんだ…。この映画で見るとアメリカが日韓の手を握らせた絵がすごくわかる。

オバマ大統領も、見識の高い立派な人だってイメージがあったけど、まあ実際にそうなんだろうけど、結局はアメリカ大事で、アジアの中のわだかまりはわりとどうでも良く、アジアの中でも更に軽視されている女性の人権に関わる軋轢にもなると、視界に入ってもいなかったんだろうなって思うと悲しくなるね。

自分が生まれる前とか小さい頃の話とかはどういう経緯でものごとが決まっていったのかはわかっていなかったので、岸首相とかがどう出てきたのか、まあweb記事とかで読んだことはあってもいまいち当時の様子とは紐づいていなかったけど、断片的に知ってた話が当時の映像付きで整理された感じがある。自分が生まれた頃なんてまだ終戦から20年とかしか経っていなかったんだから、戦時中やそれ以前の価値観もまだ根強く、厭戦もずっと強烈に自分ごととしてあったんだろうね。庶民が今も同じテンションでやっていくことは難しいにしても、一方では権力者側の、憲法を変えて軍隊を持ちたいみたいな動きは続いているので、対抗もしていかないとどうしても飲み込まれるし、何をすればいいんだろうね。

映画の中の話ではなく自分の身の周りで聞いた話だけど、軍隊を持った上で抑制的に使っていく派ってのもあって、彼らはそういうのが「現実的に戦争を避けるやり方」って認識しているようなんだけど、こんな風に戦時中の悪事を後から無かったことにしていこうって動きをしている状況が現にあるのに、理性を持って軍隊を運用していけるって認識がどこから来るんだろうって思うね。

私は、靖国にはまっていた頃ならどうかわからないけど、今は歴史修正なんかには否定的なのでこの映画は普通に説得力あるように思ったけど、元々自民党寄りスタンスの人が見たらどう見えるんだろうなって思った。右翼が激怒して上映妨害に来た事件とかあったそうなので、やっぱりどういうスタンスで見ても歴史修正側に分が悪く見えるのかな。